麒麟麦酒栃木工場専用線跡

 栃木県高根沢町大字花岡にはキリンビール鰍フ栃木工場が存在する。皇紀2639年(昭和54年)に設立され、今日に至るまで麦酒、発泡酒、チュウハイ等総合酒類の製造出荷を行っている。
 かつてキリンビールでは全国各地の工場で専用線荷役を盛んに行っていた時期があった。国鉄ヤード中継貨物が終焉を迎えた皇紀2644年(昭和59年)2月1日改正以前、キリンビールでは全国各地に散在する工場のほとんどが専用線を有していたと言っても過言ではない。現在でも仙台工場が仙台臨海鉄道を通してコンテナ列車による鉄道貨物輸送を継続している。
 この栃木工場でも御他聞に漏れず鉄道輸送が行われていた時期があった。専用線は工場の設置と同時期に建設され、烏山線仁井田駅を起点に工場へと延びていた。しかし、国鉄末期の鉄道貨物輸送縮小の流れを受け、皇紀2644年3月にトラック輸送に完全に切り替わってしまった。実働僅か5年という短命の専用線であった。
 JR化後数年はレールが残っていたが、現在はレールが撤去されている。なお、仁井田駅起点となっているが、実際は下野花岡駅寄り500m程の地点に設けられたポイントから分岐して工場に進んでいた。
 調査は無論扶桑座一人。皇紀2667年7月8日。

キリンビール栃木工場専用線の起点だった仁井田駅。木造駅舎が残っている。付近の高校に通学する学生の利用がそこそこある。烏山線開業時から存在する駅で、専用線存続時代は当然貨物ホームなどもあったが、今は一面一線の棒線駅である。
 起点は仁井田駅であったが、実際は烏山線起点の宝積寺方面に500m程進んだ下野花岡〜仁井田の線路上から分岐していた。昭和後半に建設された線路だけの事はあり、専用線といえど安全側線を有していた。その車止め標識が現在も残っている。
 しかしまあ、どうせなら起点を仁井田ではなく、宝積寺方面に向けておけば仁井田でスイッチバックする必要が無かったと思われる。これがこの貨物線の儚い生を運命付けたように思えてならない。もっとも、一見非効率な線路配置が国鉄専用線らしいとも言えるが。
車止め付近から下野花岡方を望む。遠くにキリンビール栃木工場が見える。レールこそ無いものの廃線敷はそのまま残っている。
分岐後はまるで烏山線が複線になったかのように完全に寄り添って工場に向かっていた専用線、共に道路を横切る際は別々の踏切標識を立てていたようで、専用線の踏切標識が倒されて錆付きながら残っていた。
側溝を渡る渠の橋台も残る。
踏切から工場側を望む。
暫く進むとコンクリート渠が出現する。昭和54年製と銘板に書いてある。隣の烏山線よりよほど新しい橋だが、わずか数年で役目を終えた。
さらに進むともう一つコンクリート橋が出現する。
さらにその先にもコンクリート橋がある。用水路を越えるコンクリート橋は現役の烏山線のものより新しい。
コンクリート橋にツバメの巣。
廃線跡の築堤に登り、起点の仁井田方を望む。左に見える線路が現役の烏山線である。
折りしも烏山線下り列車がやってきた。廃線跡から撮影。この専用線が建設された頃、烏山線はキハ10・11からキハ40系列に転換された頃で、現役時代から現在に至るまで隣の線路を走る車両は色こそ変われど同じままだ。
麒麟麦酒工場が近づいてきた。工場に入る前に農道を2箇所、第4種踏切で渡る。また、二つの踏切の間には五行川橋梁がある。
五行川橋梁東側の麒麟第八花岡踏切。踏切標識は何故か無いが、保護柵は残っている。
踏切保護柵に残る【麒麟第八花岡踏切】の表示。また、「起点0K456M 巾員3.0M」とある。仁井田からは1km以上離れているので、起点は安全側線のあった烏山線分岐点を示している事になる。
五行川橋梁。当線最大級の建造物遺構である。
専用線の麒麟第八花岡踏切は線路を埋め戻した跡が遺る。
五行川橋梁は複線規格で建設されている。しかし、バラストは単線分しか敷かれておらず、麒麟麦酒工場への専用線ゲートも単線分である。
キリンビール栃木工場の専用線ゲート。既に施錠されて久しい。工場内の遺構がどの程度かは定かではないが、少なくともゲート付近にハウスが設置されているところを見るに、余り残っていないのではあるまいか。
五行川橋梁西側の堤防沿いの道路が横切る箇所には標識付の踏切が残っている。しかし、道路自体も廃道になってしまったようで、マムシの危険もあるので無謀な草漕ぎは今回見合わせた。
専用線と烏山線の麒麟第八踏切間からゲート前の踏切を見る。第4種踏切お決まりの「とまれみよ」の表示が残っている。
凄まじい薮に覆われたゲート前の踏切。
麒麟第八踏切足下にあるコンクリート暗渠。
先ほどの下り列車と大金で交換したキハ40 1000番代2両の上り列車が接近してきた。コンデジで光量の少ない曇天時に流し撮りをする無謀がまた楽しい。このところ毎年恒例となっている7月下旬に烏山線に設定されるDD51とオリジナル12系による臨時快速【烏山山上げ祭】が運転される際には、ここで撮る愛鉄家もいる事だろう。


おまけ

▲仁井田駅の便所。雰囲気最高、中身とかは良くないかもしれない。
▲仁井田駅の愛らしき主が出現した。目線が合った。
▲仁井田駅付近で見かけた色彩豊かな下水管蓋。ちゃんと「おすい」と断りを入れているところが素晴らしい。ただ、この雲雀がおすいという名前に見えなくも無いが。
▲五行川橋梁の第八花岡踏切付近では何故か鬼畜米国から移入されたアメリカザリガニの陰惨なる姿がそこかしこに。しかも何故か第一歩脚ばかりである。線路上でザリガニの第一歩脚が置き去りにされるなど、聞かんな。
▲ザリガニ殺害の犯人は貴様かぁ!?
▲専用線の五行川橋梁に落書きが。わざわざこんなところに書き込みに来るとは。
▲田圃は我が国の誇りです。皆さんもお百姓さんが丹精込めて作るお米を大切にしましょう。
▲このあたりではハグロトンボ(羽黒蜻蛉)が結構います。

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